会議メモを短くまとめたい。顧客向けメールを読みやすく整えたい。資料の構成案を作ってもらいたい。
仕事でChatGPTを使えそうな場面は、すぐに思い浮かびます。ところが入力欄を前にすると、「この内容をそのまま送ってよいのだろうか」と手が止まることがあります。
その感覚は大切です。仕事の情報を入力できるかどうかは、ChatGPTへ技術的に送信できるかではなく、自分にその情報を外部サービスへ渡す権限があるかで判断する必要があります。
正直に言うと、丸鳥道でもこの感覚を最初から言葉にできていたわけではありません。今回、実際に基準を一つずつ書き出してみて、ようやく自分の中でも整理できました。
この記事では、会社員が入力前に立ち止まって確認できる基準を、初心者向けに整理します。法律相談やセキュリティ保証ではありません。会社・組織の規則や契約がある場合は、必ずそちらを優先してください。
最初に確認するのはChatGPTの設定だけではない
ChatGPTには、会話をモデル改善に使用しないためのデータコントロールなどがあります。しかし、設定を変更しただけで社内情報を入力する権限が生まれるわけではありません。
入力の可否は、会社のAI利用規則、顧客との契約、法律、業界ルール、利用中のサービスやプランによって変わります。
社内ルールがある場合は、そのルールを最優先にします。ルールが見つからない、または判断できない場合は、上司、情報システム、セキュリティ、法務など、社内の適切な担当へ送信前に確認しましょう。
設定は大切ですが、設定だけで入力の可否は決まりません。
原則として入力を避ける情報
次の情報は、会社や担当部署から明確な許可と安全な利用環境が示されていない限り、個人向けの外部AIサービスへ入力しないのが基本です。
個人情報
- 氏名、住所、電話番号、メールアドレス
- 生年月日、顔写真、社員番号
- 個人を特定できる属性や出来事の組み合わせ
名前だけを消しても、部署、役職、日付、出来事などを組み合わせると、人物を推測できる場合があります。
顧客・取引先の情報
- 顧客リスト、問い合わせ内容、購買履歴
- 商談記録、取引条件
- 顧客や取引先から預かった文書・画像・データ
自社の判断だけでは扱えない情報が含まれている可能性があります。
機密情報・未公開情報
- 新商品や発表前の計画
- 売上、原価、技術情報
- 非公開の会議内容、組織変更、人事情報
- 社内限定の資料
実際に起きた例もあります。2023年、Samsung Electronicsでは従業員がソースコードの修正や会議音声の文字起こしのためにChatGPTへ社内情報を入力し、機密情報が外部に渡ってしまう出来事が確認されました。特別な悪意ではなく、「早く終わらせたい」という日常的な動機からの入力だったと報じられています。
認証情報・セキュリティ情報
- パスワード、APIキー、アクセストークン、秘密鍵
- 社内システムの接続情報
- 非公開URL、セキュリティ設定
これらは匿名化を検討する情報ではありません。入力しない情報として扱います。
契約や権利に関係する情報
- NDAの対象資料、契約書
- 著作権や利用許諾が不明な文章・画像
- 他社から提供された資料
- 法務確認中の文書
- 業界規則で取扱いが定められた情報
自社が保有していることと、外部サービスへ入力できることは同じではありません。
匿名化・一般化すれば扱える可能性がある情報
会社の規則で利用が認められている場合は、必要な内容だけを匿名化・一般化して扱える可能性があります。
- 実在する顧客名を「取引先A」へ置き換える
- 正確な売上額を架空の数字へ置き換える
- 実際のメールを貼らず、構造だけを再現する
- 固有の商品名や計画を一般的な題材へ変える
- 資料全体ではなく、必要な論点だけを自分の言葉で説明する
ただし、匿名化しても再特定できる場合があります。社内規則が禁止している情報、契約や法律で制限される情報は、匿名化だけでは扱えるようになりません。
迷った場合は、送信せずに架空の題材へ置き換えるか、担当部署へ確認してください。
迷ったときの4つの判断基準
- 共有する権限があるか
自分が閲覧できる情報でも、外部サービスへ送信できるとは限りません。 - 誰か・どこかを特定できないか
名前だけでなく、属性、日付、出来事の組み合わせも確認します。 - 外部へ知られた場合に困る内容ではないか
その文章が公開された場合の影響を想像します。 - 会社・契約・業界の規則で認められているか
分からない場合は入力前に確認します。
4項目を確認できた場合でも、利用目的とサービス条件を確認してから進みます。1項目でも不明なら送信せず、一般化するか確認しましょう。明確に禁止されている場合は入力しません。
実際にChatGPTに聞いてみた
「本当にChatGPTは個人情報を覚えていないのか」が気になったので、実際に聞いてみました。
これまでのやり取りで名前・会社・個人情報を何か覚えているか、ChatGPTに直接尋ねたところ、名前、住所、電話番号、勤務先、生年月日、家族構成といった個人情報は保持していないという回答でした。一方で、会話の中で扱っていた「MARUTORI LAB」というプロジェクトの文脈は覚えている、という返答でした。
個人を特定する情報と、プロジェクトの文脈は別に扱われている可能性があります。ただしこれは一度の対話ベースの確認であり、ChatGPTの内部仕様を保証するものではありません。判断の基準は、この記事で挙げた「原則として入力を避ける情報」を優先してください。
初心者が安全に試しやすい題材
- 公開済みの自社Webページを短く要約する
- 架空の商品でメール文案を作る
- 自分で作った一般的な文章を読みやすくする
- 個人や会社を特定できない架空データで表を分析する
- 公開情報を基に質問案を作る
- 中身を含まない会議進行表のひな型を作る
公開情報にも、著作権、利用規約、正確性など別の確認事項があります。「公開されているから無条件で自由に使える」という意味ではありません。
入力前の30秒チェック
- 個人を特定できる情報がない
- 顧客・取引先から預かった情報ではない
- 機密・未公開・認証情報を含まない
- 契約や著作権上の問題がない
- 会社のAI利用規則に反していない
- 使用中のサービスとプランを確認した
- 迷う内容は一般化または架空化した
- 不明点があれば送信前に確認した
このチェックは「すべて確認したから絶対に安全」と保証するものではありません。見落としを減らすための補助として使ってください。
ChatGPT側の設定やプランも確認する
OpenAIの公式案内では、個人向けChatGPTはデータコントロールから、新しい会話をモデル改善へ使用しないよう設定できます。設定後も通常の会話は履歴に残ります。
Temporary Chatは履歴に残らず、モデルの訓練にも使われませんが、安全上の目的から一定期間保持される場合があります。そのため「Temporary Chatなら情報が一切残らない」と考えないでください。
ChatGPT Business、Enterprise、Edu、APIなどの法人・組織向けサービスについては、入力と出力をモデル訓練に使用しないことが初期設定として案内されています。ただし、それだけで会社のあらゆる情報を入力できるわけではありません。会社の契約内容と利用規則を確認する必要があります。
また、ChatGPTの共有リンクは、リンクを知っている人が会話を閲覧できる仕組みです。機密情報の共有には使わないでください。
データの取扱いは、利用するサービス、プラン、設定、組織の契約によって異なり、変更される場合があります。利用時点の公式情報と社内規則を確認してください。
確認したOpenAI公式情報
- Data Controls FAQ
- Temporary Chat FAQ
- How your data is used to improve model performance
- Enterprise privacy at OpenAI
- ChatGPT Shared Links FAQ
公式情報確認日:2026年7月30日
AIから返ってきた回答も人間が確認する
入力内容に問題がなくても、AIの回答が正しいとは限りません。仕事へ使う前に、事実、数字、日付、固有名詞、社内ルールとの一致、不適切な表現がないかを人間が確認します。
法律、医療、金融、契約、社内規則など、影響が大きい内容は専門家や担当部署へ確認してください。最終的な文章と判断の責任までAIへ渡すことはできません。
「AIが書いたから正しい」ではなく、「人が確認したから使える」。丸鳥道はこの順番を大事にしています。
今日できる小さな一歩
実在する社内資料は使わず、架空の会議案内メールを一つ作ってみましょう。
ChatGPTへ「読みやすく整えてください」と頼み、返ってきた文章を自分で読み直します。まずは会社や個人を特定できない題材で、入力前と出力後の確認を練習することから始められます。
よくある質問
Q. 会社のルールが見当たらない場合はどうすればいいですか?
A. 自己判断で入力せず、上司や情報システム、法務など社内の担当へ確認してください。ルールが整備されていないこと自体は、入力してよい理由にはなりません。
Q. 個人情報を消せば入力してもいいですか?
A. 名前を消しても、部署・日付・出来事の組み合わせで人物が特定できる場合があります。匿名化・一般化は、この記事の基準を踏まえたうえで判断してください。
Q. 無料版と有料版で扱ってよい情報は変わりますか?
A. プランやサービスによってデータの取扱いは異なります。契約内容と会社のAI利用規則を必ず確認してください。
まずは今日紹介した基準を、次にChatGPTを使うときに一つだけ試してみてください。ChatGPTの基本的な活用例は、ChatGPTで副業ブログを始める方法|初心者向け7つの使い方でも紹介しています。

